
生成AI CM制作の最前線と炎上リスクの回避法<ケイシャのしゃべり場 #193>
「生成AIを使ったCM」、最近よく見かけるようになりましたよね。
ただその裏側では、どんなリスクが考えられるのかなど、かなり繊細な判断が繰り広げられているようです。
ケイシャのしゃべり場 #193では前篇に引き続き、日々生成AIを仕事で使い倒している、KOO-KIのディレクター木綿達史と、プロデューサー前畠慎悟が登場。
今回は生成AIを企画段階だけでなく、完成映像にも使ったCMの制作裏話を、一部抜粋してご紹介します。
🎙️KOO-KIの企業Podcast「ケイシャのしゃべり場」
映像制作会社KOO-KIの山内香里、泥谷清美、原山大輝がMCを務める雑談番組。毎回個性豊かな社内外のゲストを迎え、隔週で配信しています。
今回は2026年1月23日配信の「生成AI回-前篇-」#193 をもとにお届けします。(2025年12月12日収録)
AI回<後篇>を音声でお聴きになりたい方はSpotifyよりどうぞ👇
ゲスト:D.木綿達史 × P.前畠慎悟(聞き手:山内/ヒージャー/原山)
リスク回避法①:何にAIを使うのか、モラル的な部分を事前によく考える
木綿D:
初めて生成AIを使うクライアントさんは、1回必ず「大丈夫かな?」って言われますね。
その場合、商用利用が可能なツールやプランを使っていること、著作権や肖像権に抵触しないようにしていることを、きちんと説明します。生成時に使ったプロンプトを見せて、「ジ◯リ風」みたいな危ない指定はしていないという証明を出すこともあります。
今のところ、法的に問題がなくても「なんで主力商品を生成AIでつくるのか」と、モラルの問題で批判されるケースはある。だからこそ、何にAIを使うのかはちゃんと考えた方がいいと思っています。
AIは“変わった企画”と相性がいい?
MC泥谷:
完成動画に生成AIをわれているクライアントさんは、どういった経緯が多いのでしょうか?例えば朝日ソーラーさんなど。
話題に上がった、朝日ソーラーさんのTVCMがコチラ👇
木綿D:
朝日ソーラーさんの案件は、もともとの企画がかなり変わっていたので、生成AIと相性が良かったんです。企画書に浮世絵風のキービジュアルがあってそれをベースにとのことだったので、そこから他のカットの背景を広げていく、という流れはすごくやりやすかったです。そこにグリーンバックで撮影した力士の実写素材を組み合わせていく形で進めました。企画段階ではなかった派手なアクションもどんどん足していきました。
MC原山AD:
たとえば、くるっとひっくり返るとかですよね。
木綿D:
そうです。ひっくり返ったり、上から降ってきたり、お風呂に入ったり。経緯としては、クライアントさんから「生成AIでやってほしい」と言われたわけではなく、僕の方から提案したんです。
実際、あれを全部実写でやろうとすると大変で、水を張って、大きな体の方が浴槽に落ちるとなると、安全面も含めてかなり難しい撮影になるので。
ただ、ここで大事なのは、生成AIを使ったからといって、ものすごく安くなるわけではないということです。同じことを安くやるために使うのは、あまり建設的じゃないと思っていて、それよりも、同じ予算の中でちょっと広がりのある表現を足すために使う方がいい。朝日ソーラーさんは、その使い方がうまくハマった幸せなパターンだったと思います。
リスク回避法②:代表的なプロンプトは保存しておく
木綿D:
メガバンクなどリスク管理の厳しいクライアントさんのときに、最後まで心配されていたのは「意図していなくても、誰かに似た人物が出てしまって、“これ自分じゃないか”と言われたらどうするのか」という点でした。こちらとしては、生成された人物についてもGoogle画像検索のような形で確認して、似た人がいないかを見ていました。それでも言われた場合は、どういう作り方をしたのかを説明するしかない、という話になります。
MC泥谷:
プロンプトは全部保存してあるんですか?
木綿D:
プロンプトを書いただけで完成版が出てくるわけではありません。そこからさらにPhotoshopなどで細かい修正を何度も加えています。
そのため、すべてを提出するとなると、制作過程全体を収録しておかなければならず、現実的ではありません。なので、提出できるとしても、代表的なプロンプトのみ、ぐらいしかできないですね。
生成AIは、提案段階・プリプロ・撮影本番でも大活躍役!
前畠P:
東亜重工さんのお仕事は弊社に直接お問い合わせいただいた案件で、こちらがどれだけ早い段階で具体的なイメージを共有できるかがすごく大事でした。そこで生成AIを使って、かなり多くのビジュアルパターンを初動で出したんです。結果として、それがクライアントの社内でも議題の材料として役立ったと言っていただけました。そういう意味でも、提案段階で生成AIを使ったことがすごく効いた案件だったと思います。
話題に上がった、東亜重工さんのTVCMがコチラ👇
今回、生成AIはプリプロでもかなり役立ちました。コンテ段階でも生成AIを使っていたので、監督、カメラ、照明、美術など各部署へのイメージ共有がすごく速かったんです。いまは遠隔で進める案件も多いので、初動で具体的な絵を共有できることの価値はかなり大きい。そのぶん空いた時間を、さらにディテールアップに使える。今回の案件は、まさに「生成AIをこう使うと強い」というのを実感できた事例でした。
木綿D:
実際、今回の案件では「イメージと違う」と言われることがほとんどなかったんです。ベースの方向性をかなり早い段階で共有できていたので、撮影現場ではそこからさらに良くするための調整に集中できた。もう一歩先の表現ができたという感じです。
しかも、仕上がりを見ても、いわゆる“AIっぽさ”が前面に出ていない。僕はそれが一番理想形だと思っていて、AIを使ったこと自体が目立つより、作品の世界観に自然に入ってもらえる方が大事なんですよね。今回の案件は、それを体現できた事例だったと思います。
MC山内D:
こういう知見が社内にたまってきているのは心強いですよね。
木綿D:
そうですね。炎上リスクや表現上の注意点も含めて、ちゃんと共有していくことが大事だと思っています。そこが積み上がることで、お客さんにも「安心して任せられる」と思ってもらえるはずなので。最終的に僕らのゴールは「絶対にオモシロイモノしか作らない」ということなので、生成AIはそのための有効なツールが増えた、という感覚ですね。
AIは“安くするため”より、“広げるため”に使いたい
木綿D:
僕は前から、AIを安くするためだけに使うのはあまり得策じゃないと思っていました。安くしようとすると、結局いちばん大事な“考える時間”まで削られてしまうからです。それよりも、今ある予算の中で、これまで届かなかった表現や、諦めていた企画を広げるために使う方がずっといい。ロケーションや人数、許可の問題で諦めていた企画も、AIをうまく使えば届く可能性が出てきた。そうなると、「予算がないからできない」という言い訳はしづらくなっていくかもしれない。だからこそ、結局また企画力が大事になるんだろうなと思っています。
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ゲスト:D.木綿達史 × P.前畠慎悟(聞き手:山内/ヒージャー/原山)
<関連リンク>
▽朝日ソーラー「東〜太陽の力 青空」篇 KOO-KI WORKS
▽テレ東BIZ 「PRムービー」KOO-KI WORKS
▽東亜重工「爪ファイター東亜」KOO-KI WORKS
▽「ケイシャのしゃべり場」概要