KOO-KI TOPICS - 「なんか聴きやすい」には理由があった! MAミキサーの仕事を覗いてみた。

「なんか聴きやすい」には理由があった! MAミキサーの仕事を覗いてみた。

SNS動画やYouTube、Podcastなど、誰もが気軽に発信できる時代。

映像編集ソフトやAIツールの進化によって、自分で音量調整やノイズ除去を行う人も増えました。

しかし、

「なんだか聞きづらい」
「BGMと声のバランスがしっくりこない」

そんな悩みを抱えたことはないでしょうか。

実は、TVCMや映画など、多くのコンテンツでは、完成前の「音の仕上げ工程」を専門家が担当しています。

その仕事を担うのが『MAミキサー』です。

今回は、TVCMや広告映像の第一線で活躍するT&EのMAミキサー・福山拓登さんに、

・MAミキサーはどんなことをしているのか
・なぜプロの作品は聴きやすいのか
・YouTubeやPodcastでも使える整音のコツ

を教えていただきました。

「映像は好きだけど、音のことはよく分からない」
そんな方にこそ読んでほしい、知られざるMAの世界をご紹介します。

この記事は、KOO-KIの企業Podcast「ケイシャのしゃべり場」に福山さんがゲスト出演してくださった際のお話と、収録時の取材で得た情報・写真をもとにお届けします。

🎙️KOO-KIの企業Podcast「ケイシャのしゃべり場」
映像制作会社KOO-KIの山内香里、泥谷清美、原山大輝がMCを務める雑談番組。毎回個性豊かな社内外のゲストを迎え、隔週で配信しています。

今回は、2026年3月13日・3月27日配信の「MA回」#196、#197 (2026年3月6日収録)をもとにお届けします。

「まずは音声で聴きたい!」という方は、Spotifyからぜひ👇


ゲスト:T&Eのミキサー 福山拓登さん(聞き手:ヒージャー/原山)

ちなみに今回は、T&Eさんのご好意で、MAルームをお借りして収録させていただきました🙇‍♀️

写真左が、TVCMをはじめ数々の広告映像のMAを担当してきたMAミキサー・福山 拓登さん。右側が、我らがケイシャメンバーでCGクリエイターとしても活躍する映像クリエイターの原山くんです。

Podcastでは、MAミキサーのお仕事を原山くんがCGに例えながらお話ししています。

ちなみに、福山さんは「ケイシャのしゃべり場」2回目のご出演!
初登場回(#187〜#188 )では、福岡ではおなじみの総合映像プロダクションT&Eさんについてもご紹介していますので、ぜひお聴きください🎧


 

さて、KOO-KIの企業Podcast「ケイシャのしゃべり場」も、実は常々、音に対する悩みがありました。

そこで今回の収録を機に、福山さんに整音について根掘り葉掘り、しつこいぐらいに質問させていただいたのですが……。

結論から言わせていただきます。

いい音にしたいなら、迷わずプロにお任せした方が断然イイ!

あきらめ早っ!当ったり前だろッ💢
……そんな怒りを覚えた方も、いらっしゃるかもしれません。

でも、MAの世界を初めて覗いてみると、「そりゃプロにお願いした方がいいわけだ……」と納得せざるを得ないことばかりでした。

今回は、Premiere Pro初心者で、MAの世界も初体験の私、KOO-KI広報のヒージャーが、体験レポート的にお届けしていきます!

とは言え、

「整音をプロにお願いする予算なんてない!」

というPodcasterさんや動画制作者の方も多いはず。

そこで後半では、

🔊PodcastやYouTubeで意識したい音の推奨値
🔊話者ごとに音を調整する方法

など、すぐに実践できそうな整音のコツも一部ご紹介します。


プロはここが違う①:MAスタジオの秘密⁉️

まず驚いたのは、プロが「良い音を録る環境」にどれだけこだわっているか、ということ。

なぜそこまで収録環境が大事なのか。

それは、質の悪い音にあとから編集を重ねて整えるよりも、最初から良い音で収録した方が、断然クオリティが高くなるから。

つまり、映像と同じで音も「素材の質」がとても大事なんです。

そのために用意されているのが、徹底した音響設計が施された特別な空間、「MAスタジオ」です👇
こちらは、最先端のプラグインが完備されたT&Eさんの「MAルーム」。

通常は、この部屋の隣にある「収録ブース」でナレーターさんの声などを収録し、この「MAルーム」でMAミキサーさんがBGM・効果音の追加、音全体のバランス調整などを行います。

今回は3人でのPodcast収録ということで、特別に広いMAルームの方にマイクを設置していただきました。

ちなみに今回は、場所だけでなく、マイクや収録機器もすべてT&Eさんにお借りしています🙇‍♀️収録時にお借りしたマイクは、ナレーション収録などでよく使われるオーソドックスなものだそうですが、私たちがいつもPodcast収録で使っているマイクとは比べものにならないほど高性能。

お値段も、比べものになりませんでした……!

さらに、壁に吸音材が張り巡らされた部屋の中に、ひとつだけ開いている小さな窓にもご注目ください👇こちらの窓は「MAルーム」と「収録ブース」の間にあり、主にスタッフ同士の意思疎通のために設けられています。
この窓をよ〜く見てみると、防音ガラスが斜めに取り付けられています。

実はこれ、1枚のガラスではなく、3枚のガラスが並行にならないように、それぞれ角度を変えて設置されているんだとか。
どおりで壁が分厚いわけです!

ガラスを斜め(非平行)に設置することで、ガラス同士が共鳴して音が筒抜けになるのを防ぎ、遮音効果を高めているそうです。さらに、部屋の中で音がピンポン玉のように跳ね返る不快な反響(フラッターエコー)を防ぐ役割もあるんだとか!

さらに驚いたのが床の構造。

このMAルームは1階にあり、隣が道路に面していることから、建物の構造体と床を完全に切り離して浮かせる「浮床(うきゆか)構造」を採用しているそうです。これにより、道路を走るトラックなどが発生させる、「地面を伝わってくる低音の振動ノイズ」をシャットアウトしているんだとか。確かに浮いてる。
でもそれ以上に、ケーブルの量、多過ぎやしませんか?

しかし、このケーブルの多さにもちゃんと意味がありました!

音響用ケーブルや電源ケーブルは、ノイズ対策を考慮した高品位なものを使用。さらに、配線方法にも気を配ることで、クリアな音づくりを支えているそうです。

収録後に、わざわざ床を開けて見せてくれた、サービス精神旺盛な福山さんにも感謝です🙏
(こちらの画像はもちろん、T&Eさんの了解を得て掲載させていただいております。)

このように、MAルームは音響的な設計が随所に施されているんです!

 

ここまでは、良い音を収録するための環境のお話でしたが、収録した音を加工し、作品に合わせた響きを作っていくのもMAミキサーの腕の見せ所です。

例えば、収録ブースで収録したセリフでも、あとから加工することで、トンネルの中で話しているような響きを加えることができるのだとか。

そこで今回は、福山さんが実際に使用している音響ソフトも見せていただきました。

画面に表示されていたのは、まるで3Dの間取り図のような画面。このソフトでは、さまざまな空間の音の響きをシミュレーションできるそうで、作品の収録環境に近い空間を選び、さらにマイクや話し手の位置まで細かく調整できます。

そうすることで、まるでその場所で収録したかのような自然な響きを再現できるのです。

ただし、画面には細かなパラメータや英語表記がずらりでチンプンカンプン…。

原山くんは興味津々で見入っていましたが、私は情報量の多さに頭がフリーズしそうでした🙄

プロはここが違う②:スピーカー7種類⁉️ 何をどう確認している?

MAミキサーさんのこだわりは、収録や加工だけではありません。

T&EさんのMAルームには、スピーカー2種類、パソコンのモニター用スピーカー2種類、さらにテレビは大・中・小の3種類が完備されています。
合計7種類のスピーカーで音をチェックし、さらにスマホの音やイヤフォンで聴いた場合も確認するなど、「どんな機器で聴いてもちゃんと聴こえるように」調整しているそうです。

実際、スタジオのスピーカーでは聴こえていても、テレビで聴くと低音が聴こえにくい、ということはよくあるそう。

PCで作って、イヤフォンで聞いた音が良ければOK!
……ではナイ、ということですね。

どこまでも音ファースト。

これだけ音に対して神経を使ってくれる方がいるからこそ、音のクオリティが格段に上がるのだと実感しました。

Podcastの冒頭で、「PCの編集音源と、MAの音ってどう違うんですか?」なんて聞いてしまってすいません!!
お恥ずかしい限りです!!!

 

プロはここが違う③:なぜ音が悪いと離脱されるのか

福山さんのお話で特に印象的だったのが、MAミキサーが大切にしているのは、単に「音を大きくすること」や「ノイズを消すこと」ではない、ということ。

目指しているのは、リスナーを離脱させない「聴き心地の良い音」です。

例えば、

👂なんとなく周りの雑音が気になる
👂途中で声が大き過ぎたり、小さ過ぎたりして、ボリューム操作が必要になる
👂リップノイズが気になる

こういった小さな違和感があると、知らず知らずのうちにストレスになりますよね。

特にイヤフォンで聴く場合は、スピーカーで聴くよりも細かなノイズや違和感が気になりやすいそうです。

Podcastのように長時間聴くコンテンツでは、音の悪さがそのまま聴き疲れや離脱につながってしまうこともあります。

「違和感のない音」を目指す作業は、とても目立たないものかもしれません。

でも、視聴者やリスナーに最後まで心地よく楽しんでもらうためには、ものすごく重要な工程なのだと実感しました。


Podcastでも試せる整音テクニック① 【音の推奨値】

さて、MAミキサーさんにお願いしたら間違いないことは分かりました。

でも、個人で活動しているPodcasterさんやYouTube制作者の方の中には、
「毎回プロに整音をお願いする予算はない……!」
という方も多いのではないでしょうか。

「ケイシャのしゃべり場」も同じです!

そこでここからは、福山さんに教えていただいた、すぐに試せそうな整音のコツを一部ご紹介します。

まず意識したいのが、音の大きさです。

最近では、TVCMを制作して、さらにTVerやデジタルサイネージにも展開するケースも増えています。

そうした場合、MAミキサーさんはそれぞれの納品規定に合わせて、音のレベルを調整しているそうです。

一方、YouTubeやSpotify、SNSなどのプラットフォームには、TVCMのような厳密な納品規定書がありません。ただし、ただし、配信サービスごとに音の大きさの目安は存在します。

例えば、YouTubeやSpotify単体の配信なら「ラウドネス -14 LUFS」、Apple Podcastsでは「-16 LUFS」程度が一般的な目安。そのため、複数のPodcastサービスへ配信する場合は「-16 LUFS」程度で仕上げることが多いそうです。

この値より大きな音でアップロードすると、プラットフォーム側で自動的に音量が下げられてしまう場合もあるため、注意が必要です。

ちなみに、ラウドネス(LUFS)とは、ざっくり言うと「人間の耳が感じる音の大きさを数値化したもの」。

一方で、音の単位にはもうひとつ、デシベル(dB)という「機械的に測定した音の大きさの単位」もあります。

やっぱり難しいですね……。
そこで、以下にざっくりまとめましたので、参考にしてみてください。



 

Podcastでも試せる整音テクニック② 【周波数】

もうひとつ教えていただいたのが、話者ごとの声に合わせて、周波数を調整すること。

そもそも周波数とは、1秒間に繰り返される波の数のこと。Hz(ヘルツ)という単位で表されます。回数が多ければ高い音、少なければ低い音として聞こえます。

一般的には、女性の声は200Hz〜300Hz程度、男性の声は100Hz〜200Hz程度が基本周波数の目安と言われることがあります。

ただし、人の声は本当に千差万別。

その日のコンディションによっても変わりますし、マイクや収録環境によっても質感は大きく変わります。

そこで福山さんがおすすめしていたのが、全員に同じ設定を当てるのではなく、話者ごとの声の特性を見極めて、自然で聞きやすい音に調整していくこと。

ということで、「イコライザー」という、特定の周波数帯を上げたり下げたりする機能で、音質を調整していくのですが、福山さんに教えていただいた感覚を、かなりざっくりまとめると、こんな感じです👇

【周波数のなんとなくの認識】
・音が籠っている時は、200Hz〜500Hzあたりが多めかも
・キンキンうるさい時は、2000Hz〜4000Hzあたりが多めかも
・男性は600Hz〜800Hz、女性は800Hz〜1200Hz付近を少し上げると、聞き取りやすくなることもある

音って単位も考え方も色々あって、本当に複雑です😱

ちなみに福山さんも、イコライザーの調整は数値だけで決めるのではなく、実際に耳で聴きながら感覚的に整えていく部分が大きいそうです。

まさに熟練のカンが必要な領域。

私も試しに、話者ごとにイコライザーの設定を変えてみたところ、少し聴きやすくなった気がしました。

なぜそうなったのか、正直まだ完全には分かっていません。
でも、ちょっと手間をかけるだけでも音の印象は変わるんだなと実感しました。

PodcastやYouTubeを制作している方は、ぜひ挑戦してみてください。

 


そして今回収録した2話分は、なんと!MAミキサーの福山さんに整音していただきました。

収録スタジオ、マイク、収録機器、そして編集まで、すべてプロにお願いしてみたという、かなり贅沢な回です🙇‍♀️

ぜひ、いつもの「ケイシャのしゃべり場」との音の違いも感じながら、お楽しみください🔥Spotifyよりどうぞ👇


ゲスト:T&Eのミキサー 福山拓登さん(聞き手:ヒージャー/原山)

 


 

<番外編>収録後、さっそく福山さんにサウンドデザインをお願いしました!

今回の収録がきっかけで、なんと後日、福山さんと実際にお仕事をご一緒することに!
ケイシャMC・山内香里ディレクションを担当した作品で、福山さんには効果音や音楽まわりを担当するサウンドデザイナーとして参加いただきました。

この記事を読んだあとに見ると、音へのこだわりや細かな演出にも、きっと耳を傾けたくなるはず。
ぜひ映像とあわせてご覧ください!

ダスキン コロリアージュコンテスト

Director:山内 香里(KOO-KI)
サウンドデザイナー:福山 拓登(T&E)


<関連リンク>
「ケイシャのしゃべり場」概要