【前編】Netflix 「サンクチュアリ-聖域-」の撮影現場もリアリティが凄かった!ロケ地(猿桜の実家)レポート
2023年5月4日に世界独占配信されると瞬く間に日本国内1位、公式グローバルでは6位にランキングされるなど全世界を沸かせたドラマ、KOO-KI江口カン監督作品・Netflix「サンクチュアリ-聖域-」。
実はKOO-KI広報ヒージャーは北九州での撮影に1日だけお邪魔させてもらっていました!
コラ!なぜもっと早く記事を書かなかったのか💢という声が方々から聞こえそうですが💦 公開前はセキュリティしっかりのNetflix作品のロケ地レポートを公開後とはいえ出していいのか分からなかったのと、公開後は「サンクチュアリ-聖域-」ブームで世の中には江口カン監督やキャストさんのインタビュー記事をはじめ、一般の方の考察ブログや動画が溢れかえっていたので、映像制作会社にはいるものの、映像制作経験ゼロのKOO-KI広報担当者が書いた稚拙な文章なんて誰も見向きもしないだろうと思い、日が経つにつれ書く自信がなくなっていきました。
しかし、私が見てきた撮影現場はまさに「聖域」のような神聖な場所で、視察から2年たった今も現場で働く人々のプロフェッショナルな仕事ぶりが忘れられず、やっぱりこの事実は伝えないといけないとスタッフさんに申し訳ない!という勝手な思い込みで、書かせていただきます。
因みに、江口カン監督の各メディアが報じたインタビュー記事一覧はコチラでも一部紹介しています。よろしければぜひご覧ください。
ハイ!前置き(言い訳)が長くなりすいません‼️
とにかく!この記事ではドラマの画面上ではほとんど写っていない、制作スタッフのプロのお仕事を一部紹介していきます。プロフェッショナルな現場の雰囲気を少しでも感じていただき、映像業界に興味を持っていただけましたら幸いです。
1. 【ロケーション編】このロケ地(猿桜の実家)が完璧すぎる⁉︎
古民家の佇まいが、想像以上だった!
Netflix 「サンクチュアリ-聖域-」の主人公、一ノ瀬ワタルさん演じる小瀬 清(後の猿桜) は北九州出身のヤンキーという設定。という事で、猿桜の過去の回想シーンなどは一部、実際に北九州で撮影されていました。
私が約2年前にお邪魔したロケ地(猿桜の実家)も北九州の某所。猿桜の父親が借金で寿司屋を潰し、貧しい家庭で育ったというストーリーから、勝手にボロボロのお宅を想像していました。
ところが、敷地に入ってみると玄関まわりなどは確かにボロボロに仕立ててありますが、何十名ものスタッフが入れるほどの敷地面積があり、庭には大きな庭石。さらには見晴らしの良い高台ということから、これは昔の大豪邸だなという風格漂う古民家でした。なるほど、昔は繁盛していた寿司屋の大将の家という設定だから、豪邸をボロボロに仕立てているのかな?スタッフさん達の台本の読み解き方が凄すぎる…。
ドラマの冒頭でも何度か出てくる立て付けの悪い小瀬家の玄関ドア。
玄関の上にはちゃんと小瀬家の表札が!3人の名前が並んでいるだけでも物悲しいのに、この経年劣化したような加工とペラペラの表札がさらに悲哀に満ちた雰囲気を漂わせています。
そして、私がこのお宅で一番目を見張ったのがこの赤煉瓦の塀!
民家でこの赤煉瓦の塀は今どきなかなかお目にかかれないですよね!このお宅のポテンシャルの高さが滲みでています。
そしてこの赤煉瓦の塀は「サンクチュアリ-聖域-」予告編の冒頭(1秒)にもしっかり使われてるんですよ!!(ほんの1秒だけでもなぜかテンションが上がった私。)ドラマでも1話目に出てきますよ〜!
撮影は「準備が大事」って、こういうことなのか‼️
正面玄関からぐるっと回って、裏庭に行くとそこにはきたろうさん演じる猿桜の父、小瀬 浩二が手塩にかけている家庭菜園がありました。
家庭菜園に植えてある野菜も全て同じ野菜ではなく色んな種類を植え、野菜の収穫時期をずらすために畑半分は新芽にしてある…。さらにコンポストまであるだなんて!この畑、マジで家庭菜園している人の畑です。奥の小屋の洗濯物干しスペースとか、ジョウロなどの小物も全てセット⁉︎昨日まで誰か住んでた?と聞きたくなるぐらいの完璧さでした。
そしてこの家庭菜園での撮影シーンを上からみるとこんな感じ。
畑の周りにスタッフがひしめき合っています。
屋根の上にも照明さん⁉︎直射日光を自然に遮っているのでしょうか。
因みに、このシーンはドラマの2話目に出てきます。猿桜の父が裏庭の畑で水菜を収穫している最中に猿桜から電話がかかってくるが、、、というシーンです。
つまり、テイクを重ねると地植えの水菜はどんどんなくなっていくので、今植っている水菜が無くなったらどうするんだろう。これって失敗できないの⁉︎と思いませんでした?
そんな時もだいじょ〜ぶ〜!テレレレッテレー!
水菜のストック〜!
からの、野菜ストックコーナー!
本当はこれ以外にも山ほど水菜は準備されており、こちらの様々な種類の野菜の苗は、ちゃんとプロの造園家の方が今回の撮影のために準備されたそうです。
そしてテイクを重ねる度に、スタッフさんが新しい水菜を植え込みます。
スタッフさんは先の先を見越して準備しているんですねー。何手先までも読むだなんて、まるで将棋のよう。
すごいのは古民家だけじゃない!周辺環境も抜かりない。
猿桜の実家でのシーンは、学生服姿の小瀬 清(猿桜)が家に歩いて入っていく道すがらも撮影されていました。
江口監督が古民家の手前の道の途中にある古びたビールケースに着目し始めて、あ!ここでも撮影するのか!とやっと気づく私。
小瀬 清(猿桜)が道をショートカットするために、このビールケースに飛び乗ってぴょんと塀を越えていくシーンです。
さらにこの小道を振り返ると、
江口監督が道全体を俯瞰で何度もチェックしています。
え?このあたり一帯が絵作りされてるの?この辺りに置いてあるもの全部美術セットだったとは‼️ 馴染みすぎていて全然気づきませんでした!
結局このシーンはどうやらドラマではカットされていたようですが、ドラマの中で猿桜が度々塀をぴょんと飛び越えていくシーンはとても印象的ですよね。江口監督の撮影現場でのこだわり様を見る限り、猿桜が塀をショートカットするのには何か思い入れがあるのかもしれませんね。
因みに、上記写真の江口監督の後方は広い駐車場で、スタッフさんのトラックやワンボックスカーなど10台ほどの車がギチギチに停まっていました。スタッフさんも目視で総勢80人はいるのではないかという大所帯。
撮影機材を載せたトラックは東京から陸路で3日間ぐらいかけて北九州まで来たそうです💦 地方ロケでもこんなにたくさんの方がスケジュールを調整して現場に集結していることにも驚くのですが、よくロケ地の近くにこんな広い駐車場がある絶好のロケーションを見つけられたな〜とそちらにも強い関心が湧きました。
そして、駐車場に停めてあったもので私が一番驚いたのがこのピンクの箱。
何やらこのピンクの箱から長いコードが猿桜の実家まで(約100mほど)ずっと伸びているのです。不思議がっていると、可搬形発電機だと教えてもらいました。撮影現場では照明やカメラなど電力を大量に使うので、家庭の電力だとすぐに落ちてしまうんだそう。知らなかったー!撮影ってこんなにも色んな事前準備が必要なのかー!
どうしてこんなに好条件のロケ地を見つけられたのか⁉︎
ロケ地を歩き回るうちに、そもそもこんなに絶好のロケーションがよくあったなぁ〜と感心しているところに、ちょうど北九州フィルム・コミッションの上田さんがいらっしゃったのでズバリ聞いてみました!
ヒージャー:初めまして!突然ですがこの古民家は本当に素晴らしいですね!
上田:猿桜の実家探しは非常に難航しました。そもそも裏庭に畑があるお宅が全然みつからなかったんですよ。
ヒ:なるほど〜。本日撮影したシーンを台本通り忠実に撮影できる間取りのお宅を探さないといけないんですね。確かに家の裏側の日当たりの悪い場所で家庭菜園する人なんていないですもんね。
上:実は、裏庭は元々荒地でイチから畑を作ってもらったんです。
ヒ:えーー!荒地からあの状態にしたんですか⁉︎
しかし、このお宅は築年数は古そうですが、つい最近まで人が住んでいたかのようですね。
上:実際、数ヶ月前まで人が住んでらっしゃったお宅なので、状態も良かったんです。
ヒ:それは凄いタイミングが良かったんですね!
さらにこの赤いレンガの塀、趣があってとても立派ですね!よくこんな古くて状態の良い塀が残ってましたね。
上:そうなんです、このレンガが良くて。
北九州は戦前から製造業をメインとする工場地帯として発展してきたんですが、戦後の高度成長期に産業構造の転換に苦戦し、他の都市と比べると再開発があまり行われてこなかったんです。そのおかげか、北九州では昔ながらの街並みが今も残っているという歴史的背景があるんです。
ヒ:なるほど〜!第2次産業がさかんだった時代は北九州は逆に他のどの街よりもずいぶん裕福なエリアだったんでしょうね。だからこんな大豪邸が今も残っている。北九州が映画のロケ地として使われる事が多い理由がすごく腹落ちしました。ありがとうございました!
2. 【美術・装飾編】家の中についさっきまで人が居たかのよう。人の温もり、匂いまで想像される生っぽさの正体は何⁉︎
撮影される部屋だと思わないほど自然な汚部屋。
猿桜の実家の中での撮影も、私こっそり拝見させていただきました。最初に見たのがコチラの江口カン監督がカメラチェックをしている部屋。
ご覧の通り、パッと見きったない部屋にスタッフさんがギュウギュウ詰めの状態です。
何を撮影しているのかと思い、スタッフさん達が見るカメラチェック用の映像を覗いてみたところ、
どうやら家族写真を撮影している様子。ドラマをご覧になった方ならお分かりかと思いますが、台所の冷蔵庫に貼ってあった、あの写真です!この家族写真のカットがまさかドラマ内で4回も使われる重要なシーンとは思ってもみなかったので、写真がボケボケですいません🙇♀️
撮影終了後、スタッフさんがはけたので、先ほどの監督がカメラチェックしていた汚部屋をまじまじと観察してみました。
ふとんも敷きっぱなしでしたし、なんて汚ったない部屋なんでしょう!まさかこの古民家の実際の持ち主が全て荷物を置いていかれたのかな?自分の弟の部屋も臭かったな〜なんて思い出したりしていた私。
さらによくみてみると、柔道着がぶらさげてある…。ん?
もしや、主演(小瀬 清)の部屋じゃない⁉︎えーーーー?この物の多さ!全部撮影用のセット⁉︎
考えれば当然と言えば当然なんですが、本気で勘違いするほど自然だったんです!
よくみると勉強机にはこれから書こうとしている「門司調理師専門学校の申込書」。何度も鉛筆で書いては消したかのような消しゴムのくずまで。清は高校卒業後はお父さんの後を継いで、寿司職人への道も考えていたのーーー?もうこれだけで泣けるじゃないですか。
因みに、調べたところ「門司調理師専門学校」なんて学校はありませんでした。この申込書もゼロから作られたものだったようです。恐るべし…。
さらにうろちょろしていると別の部屋で図面を発見!
小瀬 清の部屋、図面上でもかなり物が多く散らかってますね。
さらによく見ると、「※玄関扉替え」と書いてあります!
あの立て付けの悪い玄関ドアが元々この古民家についていたドアじゃなかっただなんて!
それにしてもこんなにたくさんのモノを、台本のほんの数行から想像して用意できるなんて本当に凄い。でも、ほとんど映像には映らないものばかりなんじゃないかしら…。
「映らないかもしれないけど準備しておく」ということなんでしょうか。
スタッフさん達の本作に対する気合いの入りようが伺えます。
清の部屋は1話目にちょっとだけ出てきます。実際どれぐらい映っているのか、ぜひシーン全体の隅々までご注目ください。
小瀬 浩二が毎日使っているかのような生活感
今度は家の外をぐるっとまわって、さっき撮影していた裏庭から部屋の中を覗いてみることにしました。
小瀬 浩二(猿桜の父)が裏の畑で作業中に、家の中で鳴っている電話をとろうとするシーンに出てくる部屋です。
まずご覧いただきたいのがこのレトロなフロアマット。昔おじいちゃんちで見たかのようなリアルな猫が描かれたマットを横向きに置いてあります。この置き方もなんだかリアルですよね。裏口だから、人の目を気にしてない感じがすごく出ています。
気になってしょうがないので、ちょっと部屋に上がらせてもらいましたよ。
まず右手には勉強机があります。
机の周りをよーく見てみると
机の上や本棚には野菜作り関連の本がたくさん並んでいます。しかし真正面は料理本。料理が好きなんだけども、最近は野菜作りにはまっているという事でしょうか。台本以上に人物像の内面が想像されます。他にも鉛筆立てにホチキスをかけていたり、忘れてはいけないMAPをクリップ留めしてあったり、実際に使っている感が半端ない。
小道具たちの時代設定も忠実に。
さらに奥の部屋に進んで右手を見ると電話がありました!きたろうさん演じる小瀬 浩二(猿桜の父)は、不自由な足を引きずって畑からここまで電話を取りに来ていたんですね。
FAX一体型の電話。ファクシミリってやつですね。昔のドラマではよく見ましたね。
(ストーカーがFAXをたくさん送ってくるシーンとかでww)
電話まわりに色んな重要であろう紙をペタペタ貼ってあるのもリアルですね〜。
見ただけで懐かしさが溢れ出す「たまのれん」に立派な「魚拓」。住人はお魚を捌ける人というのは間違いないですね。
そして福岡県民でホークスファンなら必ず家に飾ってあるであろう「野球グッズ」。しかも現在のソフトバンクホークスではなく、前身の福岡ダイエーホークスのキャップとユニフォームが飾ってあります。福岡ダイエーホークスは1989年ー2004年なので、この間の時代なんでしょうね。
食卓テーブルの上に置いてある食べかけのお菓子達。輪ゴムで留めた感じが昔っぽくてイイですね〜。スーパーの買い物袋も今はタダでは貰えないですが、結んでポンと置いてあるのがリアルですね〜。
続いて台所も覗かせていただきました。
家族写真が貼ってあるあの冷蔵庫があります!(上の写真には家族写真は貼ってありません。スタッフさんが大事にしまっていたのでしょう。)この部屋にいる時の小瀬 清はちょっぴり優しい一面を見せる気がしますね。食を司る台所というのは親の愛情を思い出しやすい場所なんでしょうか。
どこか懐かしい雰囲気・空気感も、実は演出されていた!
室内をウロチョロしていると床にサーキュレーターが変な方向を向いて回っていることに気がつきました。何だこれ?と見ていると、これはスモークを焚いてるんだよと教えていただきました。江口作品ではスモークを焚くことが非常に多いんだとか。
青い機械でスモークを焚いて、黄色いサーキュレーターで拡散しているようです。
サーキュレーターが置いている位置は、こんな感じ。
音声さんの奥に玄関があって、左手から猿桜が家に入ってくるというシーンです。カメラ位置は右手奥です。結構手前からスモークを焚いているんですね。
スモークに照明が当たるとこんな感じ。朝靄のようです。
この古民家に漂うどこか懐かしい雰囲気は、用意された装飾品から感じられるのかと思っていたら、実は室内を漂う空気にまでひと手間加えられていたとは!肉眼では全く気づかなかったのですが、確かに写真を通してみるとうっすらモヤがかかって見えるんですね。
しかし、ドラマではほんの一瞬しか映らないであろう背景に、ここまで気を遣って絵づくりする意味は何なんだろう。この時の私は全く分かっていませんでした。
実際にドラマを観るまでは。
2023年5月 Netflix「サンクチュアリ-聖域-」が公開されて私も家で初めて視聴しました。
撮影現場も一部拝見し、台本を読んだ上での視聴なのに、どんどん俳優さん達の素晴らしい演技に引き込まれていくから自分でも驚きました!
背景の細部にまで気を遣って作られた絵づくりというのは、演者さんの気持ちも盛り上げ、違和感なくストーリーに人を引き込むパワーがあるんだなぁ、背景って本当に重要なんだなぁと感じることができました。
ほんの数時間しか目撃していない私がこれほどに心動かされるのですから、この作品に心血を注いだスタッフさん達は完成版を観た時にどんなに感動したことでしょう!
それでは、次回はそんなNetflix「サンクチュアリ-聖域-」の現場スタッフさんの中でも、私ヒージャーが勝手に注目させていただいたスタッフさん達を詳しく紹介していきたいと思います!
(後編に続きます↗︎)